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2006年01月08日

赤い服のチカラ ー挫折編ー

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 もういい加減「赤い服」シリーズも止めなければと思いつつ止められないこのシツコサ!
でも良いことじゃないことも残しておかなければ…

 入社してすぐ研修が始まった。
もうエネルギー満載で何かに挑戦する必要がない訳だから、
赤い服を着て局に行くのは止めていた。
すると、まだまだ本物の成功ではなかった私に次々に試練が!

●アナ研修・三重苦物語・・・
①アクセント
②鼻濁音
③母音の無声化

以上がその当時絶対必要といわれた良いアナウンサーの条件。
なんと私はその時点で3年半のアナ経験があったにもかかわらず、
全部出来ていないと上司からのご指摘。
このときのショックはどう表現してよいかわからなし、今思い出しても悲しくなる。
しかも言語表現は生後何ヶ月で獲得し、その後ずっとほぼ同じ発声・発音を
繰り返すわけだから、そうそう簡単には直せない。

しかも母音の無声化って何よ、といった具合にそれがどういったものなのかも
よく知らなかった。
(でも悲しいかな、西日本生れの人は生来できていない可能性が高い。)
例えば「菊」「薬」「です」・・・
「kiku」「kusuri」「desu」
これらの言葉は、様々な条件が重なり合ったときにそうなるものだが、
母音の「i」「u」を発音しない。
そして何と言ってもいちばん私にとって難しかったのが「キツツキ」。
こんなふうに「ツツ」と重なると本当に発音がもたもたする。
実生活ではキツツキなどほとんど見ることもニュースになることもないが、
研修では何度、「キツツキ」「キツツキ」と繰り返させられたかわからない。

おかげさまで今ではちゃんとできるようになりましたが、
こればかりは、親を恨む訳にもいかず、
かといって自分の努力不足という訳でもなかったけれど、
大変なコンプレックスだった。

という訳で、肌身離さず持っていたのが、写真の「アクセント辞典」。
今でも上記の3つが不安な私は、ナレーションの仕事の時は必ず持っていきます。

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●研修トピックス
最年長の男性アナウンサーが私に言ってくれた言葉が
今も心に残っています。

なかなか研修で成果が見られなかった私。能天気な私ですら、
落ち込む日々。そんな時こんな風な言葉をかけてくれたのです。

(研修を受けていた3人の女性を建物になぞらえて評価して・・・)
「Aさんは、品良くまとまった日本家屋のよう・・・。Bさんは軽やかな洋風建築・・・、そして、
 大平くん。大平君はね、ボクは思うんだけれど君にはね、ある意味すごく可能性を感じるんだよ。
 その~ね、研修は大変だったかもしれないけれど、他の2人のようにすでに出来あがって
 いるものではなくて、そうだな、
 大きなビルが建つかもしれない、イヤどんな建物になるかもしれない土台のようなものかな、
 そう、そうね大きくなるかもしれない土台の状態かな。」

 リアルタイムでは、この時確かすごく複雑な気持ちだったと記憶している。
それはなぜかと言うと、「現在進行形では使い物にならない」
と言われていると同じだと思ったから。
複雑な表情をしていると、Aさんが私に「オオヒラちゃんがうらやましい・・・。私はいつも
ああいうふうに評価される。これ以上いけないのかな、と思っちゃう・・・」

いつも惨めに叱られていた私なのに、「う・ら・や・ま・し・い?」
人間の気持ちって複雑で難しい・・・

でも私はこの上司の一言で浮上した!(やはり単純なオンナなのです)
土台でも基礎工事でも良いではないか。自分の思いどおりに建物を建てよう、と。

時はバブル。

ただ土台のみを引っさげて渦のなかに突入していった。
(つづく…)

 

投稿者 M.Ohira : 2006年01月08日 14:28